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次回はユングの『転移の心理学』を援用した錬金術をテーマとした作品を制作する予定

今回の記事は、次回の作品の構想です。

アートを題材とした不思議な夢から、次回の作品制作の構想を得る

2週間ほど前に「アート作品のヒントとなった変容あるいは再生を連想させる夢@夢日記&夢分析」に書かれているような不思議な夢を見ました。
そこで記事にも書かれているように、次回の作品は錬金術をテーマとしたものにしたいと考えています。

このように夢は時として作品構想の重要なヒントをもたらすことがありますので、アーティストの方々には夢日記をつけることをお勧め致します。
なぜなら夢日記を習慣づけることで、夢の内容を覚えていられやすくなる傾向があるためです。
関連記事:夢日記の付け方@夢分析

錬金術のプロセスが分かりやすいユングの『転移の心理学』を援用

錬金術に関しては、和訳されていないものも含めれば膨大な著書が存在しますが、私が馴染みがあるのは仕事柄ユングのため、ユングの解釈に基づく作品にしたいと考えています。

そのユングは、特に晩年は錬金術の研究にかなり傾倒していたため、その時期の著書はほとんど錬金術に関するものですが、中でも作品制作に利用しやすいのは、錬金術を転移との関連で論じた『転移の心理学』(1946)です。
なぜなら『転移の心理学』は『哲学者の薔薇園』の挿絵を元に、錬金術のプロセスを10段階に分けているため、そのプロセスに沿って作品を製作しやすいためです。

C. G. ユング著『転移の心理学』

ユングの考える錬金術の世界は本来「可視化できない」もの

もっとも『哲学者の薔薇園』の10枚の挿絵のイメージをそのまま作品化することは、既にタロットカードなどで多くのアーティストやイラストレーターが同じような手法で試みています。

また何より、そのようなイメージの模倣は、ユングの理念に著しく反するものです。
なぜならユングにとって『哲学者の薔薇園』はプロセスの象徴に過ぎず、しかもその象徴の対象となっている集合的な力(元型あるいは集合的・普遍的無意識)は本来可視化できないものであり、したがってその可視化や言語化は、説明できないものを何とか無理にでも説明しようと試みた結果生まれたものに過ぎないためです。

舞踏家の相良ゆみ氏にパフォーマンスを依頼

このように錬金術の世界をユングの思想に沿って忠実に作品化(ビジュアル化)することは、最初から無理があります。
したがってビジュアル化を主眼に置くのではなく、錬金術のプロセスに象徴される集合的な力を感じ取り、その結果その力に突き動かされる形で動きなどが生じ、それを撮影することで結果的にビジュアル化されるという手法を取ろうと考えています。

そこで舞踏家の知人の相良ゆみ氏にパフォーマンスをお願いすることに致しました。
以前からユング派の思想に通じていることは知っていましたが、今回話を持ちかけたところ、ユングの錬金術の思想についても深く理解されていることが判明したためです。

相良氏とは8日に初回の打ち合わせをすることになっていますが、その席では差し当たって演者を一人にするか二人にするか決定したいと考えています。
なぜなら『転移の心理学』では、既述のように錬金術のプロセスを、転移と呼ばれるセラピストとクライエントという二人の人間の関係性と関連づけて論じられているため、この本の理論に忠実に作品を作ろうと考えると、必然的に二人の人間が演じることになるためです。

しかしこれも既に述べましたように、二人の演者によるパフォーマンスでは挿絵のイメージに近づいてしまい、模倣から脱却するのが難しくなります。

いずれにしても相良氏が気持ちが、というよりも心あるいは魂が入り込みやすい形にしたいと考えています。
相良氏のパフォーマンスが作品の出来栄えを大きく左右すると考えられるためです。

参考文献

カール・グスタフ・ユング著『転移の心理学【新装版】』、みすず書房、2016年

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