写真家 田尻健二のウェブサイト(Ver.3)。撮影した写真・展示情報・写真をはじめとしたアート情報などを掲載。今後の展示予定:2018年8月9日〜10月末(予定) NEW JAPAN PHOTO at HOTEL THE KNOT Shinjuku、8月21日〜8月25日 Pleiades Gallery at NY「We」、11月12日〜11月18日 トキアートスペース 個展「症状の肖像」

Biography

田尻健二は1966年に北海道の炭鉱閉山後衰退の一途を辿る街に生まれた。彼には近所に住む画家の親戚がいて、小学生の頃から毎週のようにその親戚の家に遊びに行き画集を見ていた。一番最初に惹かれたのはウォーホルの作品と横尾忠則のポスター画で、子供心にも面白いと感じたようだ。次いでホックニーやピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画などへと関心が移っていった。彼の家は典型的な父親不在の家庭であったこともあり、学生時代を通じて父に代わり、その親戚のことを明らかに理想視していた。
また彼はひとりでいる時、昆虫や工場の絵を描いている以外は、長時間空想に浸るか、自分でルールを考えたゲームをして遊んでいるような子供でもあった。

中学に進学した彼は、同級生の絵の独創性に驚くとともに、自身の絵にはそれが著しく欠けていることを思い知らされすっかり自信を失い、その後急速に絵を描くことから遠ざかっていった。
その彼が再び創作活動を始めたきっかけは、仕事のカウンセリング業を通してであった。資格取得のためのセミナー会場が偶然にもギャラリーであったことから、忘れかけていたアートへの関心が一挙に蘇りアート鑑賞を再開。その後2013年に偶然見つけて参加した写真のワークショップが最後にグループ展を開催する形式であったため、これがアーティスト活動を始める直接のきっかけとなった。
このように彼のアーティスト人生は、自身の強い信念に基づき形成されてきたわけではなく、むしろ偶然に偶然が重なるような、目に見えない力に導かれた結果のように思えてならない。

その彼の作風はよく絵画的と称される。これは恐らく彼がもともと絵を描く人間であり、また写真よりも絵画の鑑賞を好むことから、その長年の鑑賞体験を通じて絵画的な構図の感覚を身につけていったからではないかと考えられる。加えて空気感の表現をイラストレーションの鑑賞を通じて学んだと彼自身自覚している。
また近年の彼のコンセプト重視の傾向には、2015年に加入したアーティストランのART TRACE GALLERYでの経験の影響が大きい。ここでも彼は、他のメンバーと比べて自身の作品コンセプトが見劣りすると感じたのだ。加えて同年に入学した京都造形芸術大学の通信過程で、様々なジャンルの芸術に魅力を感じ、そこからインスピレーションを得て作品を制作し始めたことも関係している。

以上のように彼のアーティスト人生を紐解く上で、憧れと劣等感の概念は外せない。心理学者のアルフレッド・アドラーは、劣等感がその人を克服への努力へと駆り立てると想定したが、彼を動機づけているのがまさにそれである。またその劣等感を克服への努力へと転換できる点が、中学生の頃の彼との大きな違いでもある。

なお作品の素材は、現在までのところデジタルカメラの撮影データをバライタベースのインクジェット紙にプリントしたものとをメインとしているが、今後の作品コンセプト次第では映像など他のメディウムを使用する可能性もある。