C. G. ユング著『転移の心理学』

今回の記事は、次回作の進行状況です。
以前に「次回はユングの『転移の心理学』を援用した錬金術をテーマとした作品を制作する予定」とお伝えしましたが、このプランがかなり具体的になって来ました。

次回作のコンセプトは「錬金術のプロセス」に限定

まずユングの『転移の心理学』は、錬金術のプロセスの心理学的な解説に留まらず、さらにそのプロセスを転移と呼ばれる人間関係の現象と関連づけるという、非常に複雑な内容となっています。
そこで作品制作に当たっては、後者の内容を端折り、錬金術のプロセスに絞って表現することにしました。

補足)このため作品タイトルも『哲学者の薔薇園』か、挿絵ごとの『メルクリウスの泉』などにする予定です。

キリスト教の布教を目的とした宗教画の精神に倣い、象徴ごとに分割して表現

ただ錬金術のプロセスに限定したとしても、ユングによるその心理学的な解釈は非常に難解で、臨床心理をはじめとした心理学を学習した人でさえ容易に理解できるものではありません。
(ですので私の理解も限定的です)

また実際の作品制作で参考にする『転移の心理学』に収められた『哲学者の薔薇園』の10枚の挿絵も、それぞれの絵柄の中に非常に多くの難解な解釈が詰め込まれているため、とても一度にまとめて表現できるものではありません。
そこで中世の時代に盛んに制作された、キリスト教の布教を目的とした宗教画の精神に倣い、象徴ごとに分割して表現することにしました。

もっとも中世のキリスト教絵画は聖書の物語のある一場面を描写したものであり、その場面を分割的に表現などしていません。
しかし『哲学者の薔薇園』の挿絵には、一見して分かるような物語は示されていませんので、キリスト教絵画の手法をそのまま周到しても難解さは解消しません。
そこで「詳しい知識がない人にも、できるだけ分かりやすく」という精神のみを参考にして、上述のような分割案に辿り着きました。

個展「症状の肖像」での反省から、分かり易さを優先

最後にここまで「分かりやすさ」にこだわるのは、先日の個展「症状の肖像」の反省からです。
「症状の肖像」としながら、特定の症状を念頭に置かなかったため、出来上がった作品からは、そのコンセプトが伝わりづらくなってしまいました。

また象徴を分割表現することで、挿絵の単なる模倣を避けられる効果も得られると考えています。

順調に行けば今月中に1枚目の挿絵「メルクリウスの泉」を撮影する予定です。
また分割表現することで作品数が増えることにもなりましたので、10枚の挿絵すべてを完成してから個展の形でまとめて展示するのではなく、今後の展示機会に合わせて挿絵ごとに発表して行く予定です。
(少なくても50点以上の作品数になる予定です)

C. G. ユング著『転移の心理学』
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