いたみありさ著『学校では教えてくれないアーティストのなり方』

私説:アーティストバイオグラフィーはセルフブランディングに欠かせないアーティストとしてのアイデンティティの表明

海外の活動では必須とされるアーティストバイオグラフィー

前回紹介した『学校では教えてくれないアーティストのなり方』で、海外で活動するためにはアーティストバイオグラフィーが欠かせない点が強調されていました。
同書によれば80年代から使われ始め、今ではギャラリーから最初に要求されるほど重要視されているそうです。
ですが日本人アーティストのサイトでは、CVはあってもバイオグラフィーまで掲載されているものは少ないようです。

アーティストバイオグラフィーとは

このアーティストバイオグラフィー、経歴とも制作に関することとも異なり、アーティストとしての自分についてストーリー仕立てで語るというものです。
(バイオグラフィー自体は伝記と訳されているようです)

この話を聞いて「なぜ経歴だけでは不十分なのか?」との思いが生じ、その答えを自分なりに探ってみたのが、今回の記事の趣旨です。

アーティストバイオグラフィーとはアーティストとしてのアイデンティティの表明

『学校では教えてくれないアーティストのなり方』で紹介されているアーティストバイオグラフィーには、いずれもアーティスト活動を始めるに至った動機や関心事、影響を受けた人物や事柄などが記載されています。

この内容を見て私が思ったのは、欧米では自分がどのようなアーティストであるのか、つまりアーティストとしてのアイデンティティの表明を求められているのではないかということです。

アーティストバイオグラフィーはセルフブランディングに欠かせない

ではなぜ作品と活動歴だけでなく、作家の個人的な事柄まで公にする必要があるのか。
それが分からなくても、作品の鑑賞や評価にそれほど支障はないのではないか。
その理由の1つとして考えられるのがセルフブランディングです。

アーティストバイオグラフィーが単にこれまでの人生を綴るのではなく、それがストーリー仕立てになっていることから、私はブランドストーリーを連想しました。

ブランドストーリーとはアパレルメーカーが好んで用いる手法ですが、私の理解では、それは単に歴史を語るのではなく、ブランドを擬人化し、魅力的な存在として提示することで人々の心を惹きつける手法です。

※参考ページ:ストーリーこそがブランド価値の源泉である【日本からグローバルブランドを Part 2.】 | freshtrax | デザイン会社 btrax ブログ

この意味でアーティストバイオグラフィーが重要視されているということは、自分自身を魅力的にアピールできないような人はなかなか関心も持ってもらえないという、昨今の風潮を反映したものと考えられます。

このセルフブランディングという言葉は『学校では教えてくれないアーティストのなり方』でも使われています。

アーティストを職業と考える社会では、作品だけでなくその人個人の属性も重視される

もう1つの要因としては、欧米ではフルタイムアーティストと呼ばれる作家活動だけで生計を立てている人が少なからずいて、それゆえ職業とみなされていることが関係しているのではないかと考えられます。

職業といっても会社員なら、勤める企業の信用力が重視されるでしょう。
しかしフリーランスたるアーティストの信用力は、専らその人個人の属性に頼らざるを得ません。
したがってアーティストを職業と考える社会では、信用力を得るためにも自己を積極的に表出する必要があるのではないかと考えられます。

海外で展示するようになってから一度もコンタクトがないは、バイオグラフィーを掲載していないからかもしれない

私は昨年よりEINSTEIN STUDIOを通じて海外のアートフェアなどに参加していますが、カタログにURLが明記された作品サイトへの海外の方からのコンタクトは一度もありません。

このことに関しては、もしかしたら『学校では教えてくれないアーティストのなり方』で指摘されているように、バイオグラフィーが掲載されていないことが一因かもしれません。

ですから近々海外活動のサポートを受けるJCATへの提出用の簡略文とは別に、本サイトと作品サイトにも1000文字程度のバイオグラフィーをなるべく早く掲載しようと考えています。

なお文法の誤りも致命的らしいので、翻訳サービスを利用する予定です。

参考文献

いたみありさ著『学校では教えてくれないアーティストのなり方』、サンクチュアリ出版、2014年

いたみありさ著『学校では教えてくれないアーティストのなり方』
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