写真家 田尻健二のウェブサイト(Ver.3)。撮影した写真・展示情報・写真をはじめとしたアート情報などを掲載。今後の展示予定:2018年4月14日〜6月17日 HOTEL ANTEROOM KYOTO「NEW JAPAN PHOTO EXHIBITION(KYOTOGRAPHIE KG+ SPECIAL EXHIBITION)」、7月31日〜8月5日 Roonee 247 Fine Artsで自身の企画による写真のグループ展「Diversity vol.1」、11月12日〜11月18日 トキアートスペースにて個展「症状の肖像」

ART TRACE GALLERY「闘争か逃走 Fight / Flight」感想

続いて木村宙(ひろし)さんの作品の感想です。

ART TRACE GALLERY「闘争か逃走 Fight / Flight」木村宙さんの作品

作品コンセプト

射撃の的がプリントされた真っ赤なTシャツが吊るされていますが、木村さんの前職は自衛官だそうで、その当時の実弾による射撃訓練の体験と、その後の度重なるテロ事件が、この作品を制作するきっかけとなったのだそうです。
またプリントされた射撃の的も、訓練で木村さんが銃弾で撃ち抜いた的を素材としているそうです。

作品の意図は、自分が撃たれるところを想像して欲しい、その際の激しい痛みを少しでも感じ取って欲しいというもので、それらの体験を促すために、無料のTシャツを購入いただいた方には、Tシャツの裏にある人型の的に名前を書き入れてもらうという作品です。

来場者の予想外の反応

ところが来場者の反応は木村さんの意図とは異なる予想外のものだったようです。
私も昨日の当番で同じような場面に遭遇しましたが、Tシャツを購入したどのお客様も躊躇なく名前を書き入れたのです。
恐らく名前を書く物体を射撃の的と認識していないか、あるいは的であることは分かっても、その使用方法までは思い浮かべなかったのではないでしょうか。

銃社会アメリカで展示されてこそ真価を発揮する作品

銃社会のアメリカでは、多くの人が銃を所持しているだけでなく、その銃を使って定期的に射撃訓練を行なっています。
なかには物心ついた頃から子どもに銃を持たせる親もいます(もちろん訓練も親子仲良く)。

ですからこうした人々にこの作品を見せれば、否応なく普段自分が銃撃している的を連想させるでしょう。
そしてそこに名前を書いてもらうのですから、その申し出は不快感を与えるものでしょう。
ですが銃の所持を広く認める社会というものは、結果的に誰もが常にこの射撃の的のような存在となってしまうことを意味し、本作品はそのことへの気づきを促すことにつながるのではないかと考えられます。

それに対して、幸いにして銃とは無縁な日本社会では、射撃の的がプリントされたTシャツは、そのようなデザインが施されたTシャツに過ぎず、したがって購入された方は恐らくそのデザインを気にいるか、あるいは記念に持って帰られたのでしょう。

したがって木村さんのこの作品は、銃社会アメリカで展示されてこそ真価を発揮する作品ではないかと考えられます。
もし実地での展示が難しければ、コンセプトを英語で表記しネット経由でアメリカに発信していただきたい作品です。

次のページでは本展示の企画者でありギャラリースタッフでもいらっしゃる橋本佐枝子さんの作品の感想を書きます。

展示は5月20日(日)までです。
ART TRACE GALLERY「闘争か逃走 Fight / Flight」展示案内




写真家 田尻健二
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