先日ギャラリー当番で「山内 賢二 -ウシロマエ II-」を拝見しました。
今回はステートメントに「一義的な読解を不可能にすることを目指して」と書かれていることもあり、いつもとは趣向を変えて、ステートメントの内容を精査せずに、見た目の印象のみから感想を書いてみたいと思います。
戦前の印刷物の色合いを想起させるノスタルジックな色調
山内さんとは私が作家活動を始めた2013年に互いに参加したヤドカリトーキョーVol.12「なべよこ ni アート」からの知り合いのため、これまで何度か展示を拝見しました。
その山内さんの作品の第一印象はノスタルジックな色調です。
色数を絞り彩度が低めの色で構成された荒目の質感の画面が、どこか戦前の印刷物の色合いを想起させるためです。
ノスタルジックかつ抜け感の良い色調が秀逸な《テレヴィジョン》
今回の個展も、そのような色調の作品が多くを占めていましたが、その中にもこれまでとは趣きが異なる作品が1点ありました。
それが展示のメインビジュアルにも採用されている《テレヴィジョン》です。
山内さんの作品としては色数が多めで、彩度も他の作品よりも少し高めになっています。
この作品から受ける印象は、イラストレーションなどの世界で心地良い空気感を形容する表現としてよく使われる抜け感の良さです。
Instagram全盛の現在は、フィルターにより過度なまでに彩度が高められた写真が目立ちますが、ひと昔前にポラロイドが流行った頃には、シアンかぶりの独特の空気感が感じられる写真が注目されました。
《テレヴィジョン》からは、その当時の写真の空気感が感じられます。
とは言え持ち前のノスタルジックな雰囲気もしっかり残っています。
このように山内さんの《テレヴィジョン》には、レトロとモダンとの絶妙なバランスが感じられます。
展示は9月10日(火)までです。
なお明日8日(日)は私がギャラリー当番のため、終日ギャラリーにおります。
皆様のお越しをお待ちしております。