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一昨日、東京国立近代美術館で開催中のゴードン・マッタ=クラーク展を見てきました。
ナイトデーで9時まで開場していましたが、多くのお客様が詰め掛けており、展示の人気ぶりが窺えました。
数日前に参加したマッタ=クラーク展のイベントの内容とも結び付けつつ、気になった作品について感想を述べたいと思います。

見せ方により作品の印象が大きく違ってくる

展示会場には話題となっている切断(Splitting)をコンセプトとした作品群が最初に配置されていました。

ゴードン・マッタ=クラーク『Circus』、「ゴードン・マッタ=クラーク展」、東京国立近代美術館
ゴードン・マッタ=クラーク『Circus』、「ゴードン・マッタ=クラーク展」、東京国立近代美術館

 

パフォーマンス作品ゆえ、同コンセプトの作品の大多数は、このような写真の形で展示されていました。
また切断の様子が良く分かるような模型も用意されていました。
ゴードン・マッタ=クラーク『Circus or Caribbean Orange』の模型写真

両タイプの展示物を見ながら感じたことは、写真のように一部のみを見せられると、衝動に任せてデタラメに切断しまくったような印象を受けますが、模型で全体像を示されると、むしろ整然とした印象を受けるということです。

鑑賞後に購入した展示カタログで調べて見ると、本作品『サーカスまたはカリビアン・オレンジ』にはプランを示した図面が存在したようで、したがって決してデタラメに切断しまくったわけではなかったわけです。
それが写真作品だけ見ると、まるで別の印象を受けるのですから、これが良くも悪くも編集がもたらす影響の大きさです。

切断の意図が頭では理解できても、腑に落ちるまでは至らなかった

なお『サーカスまたはカリビアン・オレンジ』のコンセプトは、展示カタログによればサーカスのような空間を作り出し、キーとなるモチーフである円(circle)形部分に沿って人々が活動することを意図していたようですが、私にはこの作品が本当にその場で人々が活動することを意図していたのか確信が持てませんでした。
なぜならその作品からは、活動の場としての快適さを感じることができなかったためです。

ですから本作品におけるマッタ=クラークのアイディアは理屈としては分かりやすいものですが、疑似体験として自分がその場に身を置いたところを想像してみた時には、残念ながら円を介したサーカスの感覚を感じ取ることがあまりできませんでした。

次のページでは、マッタ=クラークが多くの建築物を切断し続けたその意図について、私なりに探ってみます。

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