今、大学の単位取得のために『協創の場のデザインーワークショップで企業と地域が変わる』という教科書を読んでいます。
副題にもある通り、ワークショップのデザインの仕方を解説した本です。
体験の機会を提供するのがワークショップだと思い込んでいた
このワークショップに関しての私の理解は、仕事のカウンセリング関連のもので経験したような体験学習であったり、あるいはアート関連のイベントで経験した非日常的な体験の提供というものでした。
つまりワークショップとは体験に重きが置かれ、それを提供するのが目的であり、言葉を変えれば体験を提供するイベントはすべてワークショップとみなされるという理解でした。
変化・創造・行動の機会を作り出すのがワークショップの真の目的
ところが同書の序盤には、ワークショップに関する意外な内容が記されていました。
ワークショップデザインとは、言い換えれば「人々の学習と創造の場をデザインすること」(P.11)
変化・創造・行動の機会を作り出すためのアプローチとして、近年では「ワークショップ」と呼ばれる手法が注目を集めています。(P.15)
問題解決のために変化・創造・行動の機会を作り出すのがワークショップ
そしてその後の章では、ビジネスやコミュニティの問題解決のためにワークショップを活用した事例が列挙されていました。
これらことから、ワークショップとは変化・創造・行動の機会を作り出すことが直接の目的だとしても、それを実施する目的つまり動機は何らかの問題解決であることが分かります。
単に体験するだけでは、ワークショップの目的を果たしたことにはならない
以上のように、これまでは体験学習であれ非日常的な体験であれ、普段はできない体験をすること自体にワークショップの意義があると思い込んでいました。
しかし同書の説明にあるように、それだけではまったく不十分で、ワークショップでの体験が問題解決のための変化・創造・行動の機会とならなければ成功とは言えないのです。
もちろん体験が楽しいものであれば、それはそれで良い思い出となるでしょうが、同書を読む限りワークショップが本当に真価を発揮するのは、何らかの創造や変容を伴うものと言えそうです。
問題意識が芽生えることがワークショップデザインの出発点
なおここでの問題解決とは、変化を必要とするすべての事柄を含んでいます。
例えば参加メンバーの創造性を促すことが目的のワークショップが企画された場合、一見問題が存在しないように思えても、その企画が持ち上がった背景には、創造性に関する現状への不満が存在していたからではないかと推測されます。
このように変化を求める欲望の背後には、必ず何らかの問題意識が存在していると考えられます。
そしてこのように考えていくと、明確な問題意識が芽生えることで、それを解決したいとの欲望が生まれ、その手段としてワークショップが企画されることになると想定されるため、効果的なワークショップをデザインするコツは、まずは第1段階の問題意識の明確化にあるように思えます。
またこのことの重要性は、現状への(強い)不満は変化への強力なモチベーションとなることからも言えそうです。
補足) 例外的なものとして、問題意識の明確化それ自体を目的としたワークショップというのも、「自分がない」と揶揄される主体性が乏しい日本人には有益と考えられます。
紹介文献
安斎勇樹著、早川克美編『芸術教養シリーズ21 協創の場のデザイン―ワークショップで企業と地域が変わる 私たちのデザイン5』、幻冬舎、2014年