森美術館「カタストロフと美術のちから」展の感想。2ページ目は、セクション1「美術は惨事をどのように描くのかー記録、再現、想像」の絵画作品の感想です。

想像力を喚起する力に秀でた絵画というメディウム

1ページ目の最初の方でも触れましたように、このコンセプトに合わせて展示された絵画作品の多くは、想像力を掻き立てるものでした。
その中でも特に印象的だったのが、ベルギーの画家ヘルムット・スタラーツ(Helmut Stallaerts)の作品でした(クリックで拡大)。

展示されていた4点の作品のいずれも、何か具体的な事柄を表象しているわけではありません。
しかしそれでも画面からは否応なく不穏な空気が感じられます。

これは鑑賞者が意図せずにストーリーを作り出し、しかもそのストーリーを明確には知覚していないため漠然とした雰囲気のようなものだけを感覚的に(身体感覚として)感じ取っているからではないかと考えられます。
しかしこれこそが写実性では写真に劣るものの、絵画が秀でた想像力を喚起する力なのではないかと考えられます。

スタラーツは名前すら知らない画家でしたが、今回彼の作品を拝見できたことが一番の収穫でした。
その他、ホァン・ハイシン(Huang Hai-Hsin)の絵画作品も、同様の理由からとても良かったです。

今回は同じコンセプトの元で絵画作品と写真作品とが展示されていたことで、絵画というメディウムが有する想像力を喚起する力が、いかに優れたものであるのかを実感することができました。

次のページではセクション2「破壊からの創造」の展示作品の感想を述べます。

森美術館「カタストロフと美術のちから」展 公式ページ
(展示は既に終了しています)

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