写真家 田尻健二のウェブサイト(Ver.3)。撮影した写真・展示情報・写真をはじめとしたアート情報などを掲載。今後の展示予定:2018年8月9日〜10月末(予定) NEW JAPAN PHOTO at HOTEL THE KNOT Shinjuku、11月12日〜11月18日 トキアートスペース 個展「症状の肖像」

中筋朋著『フランス演劇にみるボディワークの萌芽』〜中身が濃すぎて再読中

中筋朋著『フランス演劇にみるボディワークの萌芽―「演技」から「表現」へ』

中筋朋著『フランス演劇にみるボディワークの萌芽』。以前に引用記事を書いたこともある本です。
既に読了済の本ですが、ベンヤミンの『複製技術時代の芸術作品』における〈いまーここ〉的性質が意味することの続きの記事を書く際に参考にするために手に取ったところ、中身が濃すぎてついつい夢中になってしまい、期せずして再読しています。

『フランス演劇にみるボディワークの萌芽』の概略

19世紀末から現代に至るフランス演劇の流れ

本書は19世紀末から現代に至るフランス演劇の流れを追った本ですが、タイトルにボディワークとあるように、俳優の身体に焦点を当て、その俳優の身体観に大きな転機が訪れた時期を19世紀末から20世紀初頭と見定めています。

またその変化には、当時の最先端の精神医学や心理学であるフロイトの精神分析の「無意識」に関する理論が、非常の大きな影響を与えたことが考察されてもいます。
(意外にもフロイトの唯一の受賞歴は文学に関するものです)

またそれに付随する形で、自由演劇などの実験的な劇場や、メーテルランク、マラルメらの先駆的な活動の数々も綴られています。

アートに先立ち演劇界では脱物語化がいち早く進展

ですが私が最も興味をそそられたのは、デュシャンの『泉』などのコンセプチュアルなアートが登場する以前の19世紀末に、すでにフランスの演劇界においては、戯曲と呼ばれる脚本を退け、俳優のプレゼンス(存在感)を追求する脱物語化がいち早く進展していたことでした。
それまでの私は、アートが常に芸術の最先端だと思い込んでいたため、この事実は衝撃的だったのです。

こうしてアートを過剰に理想化する幻想から目覚め私は、急速に演劇その他のパフォーマンス・アートにも関心を抱き、やがてその分野の人々に作品制作を依頼し、いよいよ来週から始まる個展の作品『症状の肖像』などを生み出すようになっていきました。

ですから今思えば本書『フランス演劇にみるボディワークの萌芽』は、私の作品制作スタイルに決定的な影響を与えた一冊だったと言えそうです。

内容もパフォーマンス・アートに関して素人同然の私でも、難なく理解できるほど平易でした。

紹介文献

中筋朋著『フランス演劇にみるボディワークの萌芽―「演技」から「表現」へ』、世界思想社、2015年




写真家 田尻健二
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