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2ページ目は唐仁原希さんの作品の感想その1です。

《それでもボクは。》の感想

唐仁原さんの作品を最初に拝見したのは優秀賞を受賞されたFACE展2016の会場で、その時は今回も展示されていたこちらの作品《それでもボクは。》(2014)が特に印象に残りました。
(ちなみにこの時のグランプリ受賞作は、1ページ目で紹介した遠藤美香さんの木版画《水仙》です)

唐仁原希さんの作品《それでもボクは。》

古典と現代が共存することで、別世界のリアルな目撃者であるかのような感覚が促される

《それでもボクは。》には、中世の西洋絵画を思わせるような光景が描かれていますが、よく見るとペコちゃんなどの現代的なモチーフも描かれていて、山口晃さんの作品に通じるような古典と現代との共存が見受けられます。

個人的に、こうした手法には鑑賞者が知らず知らずのうちに別世界に身を置き、自分がその場のリアルな目撃者であるかのような感覚を促す効果があるのではないかと考えられます。

重層的なコンセプトにも関わらずシンプルな印象

加えて画面には、半獣半人の少女や人魚にウサギやカラスなどの動物も登場するなど、まるでお伽話の世界のようです。
さらに構図に目を移すと、奥に別の部屋があり、さらにその先にも暗がりの部屋があるというように空間が幾重にも重なっています。

1つの画面にこれだけ多くの要素が詰め込まれているにも関わらず、それでいてシンプルな印象を受けるのは、恐らくモチーフや要素に適度なメリハリがつけられていることで、メインとサブというような序列が生まれているからではないかと考えられます。

同時代性も加味された作風

また《それでもボクは。》に限らず唐仁原さんの作品には、登場人物の目が以上に大きいという特徴があります。
このアニメの世界のような手法は、典型的には人物の幼さを強調する効果があると考えられますが、それだけでなく現代社会における視覚偏重の傾向を表象しているようにも思えました。
その意味で同時代性も加味された作風も感じられました。

以上のように唐仁原希さんの作品《それでもボクは。》は、緻密なコンセプトの元に注意深く画面が構成された、非常に見応えのある作品と感じられました。

次のページでは、今回の展示で一番印象に残った作品として、唐仁原さんの作品をもう1点紹介します。

「絵画のゆくえ2019 – FACE受賞作家展」展示案内

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