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ART TRACE GALLERY「カナタのてざわり」の感想記事。
1ページ2ページのコヤマイッセーさん、3ページの長谷川美祈さんに続いては、企画者でもいらっしゃるギャラリーメンバーの橋本佐枝子さんの展示作品の感想です。

橋本さんのスペースでは、メインの作品として、人に見立てたクマのようなシルエットの像が無数に配置され、全体として家の形をなしているような大型の平面作品が展示されていました。
この作品からは次のような連想が働きました。

4ページめ目次:
人種の違いを連想
未だに西欧のルールに支配されるアート・ワールドを表象
多様化するためには周縁の国から新たな制度が生まれる必要がある

人種の違いを連想

クマのシルエットには白、淡いグレー、濃いグレー、肌色などの色の違いが見られることから、それが肌の色の違いのように思え、このため人種の違いを連想しました。

未だに西欧のルールに支配されるアート・ワールドを表象

さらにその色の分布の仕方には、白が多数を占め、その他の色が点在しているという特徴が見受けられるため、白人に支配されている世界にように思えました。

またそれに加えて、これがアート作品として提示されていることから、アート・ワールドの縮図とも見て取れました。
なぜなら現在は西欧以外の地域のアーティストの創作物もアート作品として認められるようにはなりましたが、作品の評価の基準や、展示その他のルールなどの制度面においては依然として西欧の流儀が踏襲されているためです。

日本人も含め、欧米諸国から周縁とみなされてきた国々のアーティストが、世界で認められるために、これらの規範をグローバル・スタンダードとして崇め積極的に取り入れる限り、この傾向は未来永劫続いていくことでしょう。

またさらには、仮に欧米諸国以外の地域において、これまでのアートの流儀から著しく逸脱した斬新な作品が生み出されたとしても、規範がもっぱら欧米の価値観により構成される現状が続く限り、そのような作品は多分に異国のアートとしてオルタナティブな価値が与えられるに過ぎない可能性が高いようにも思えます。

多様化するためには周縁の国から新たな制度が生まれる必要がある

以上のことからアート・ワールドに真の多様化がもたらされるためには、作品のみならず、制度の部分でルールや規範を打ち破るような動きが周縁の国々で次々と生まれ、それによって西欧の流儀が相対化される必要があるのではないかと考えられます。

以前に提示した企画「校則破り」にもそのような想いが込められています。
なぜなら、ここでは既存のルールや規範を破ること自体に焦点が当てられているためです。

なおここで重要なのは、変革のムーブメントの起点が周縁の国でなければならないことです。
これは起点が西欧諸国である限り、西欧が業界をリードし支配する構図が変わりなく続くことになるためです。

ART TRACE GALLERY「カナタのてざわり」公式ページ

参考文献

川口幸也編『展示の政治学』、水声社、2009年

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