森美術館「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」展示カタログ

ヴォルフガング・ライプの作品感想@地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング

森美術館「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」のヴォルフガング・ライプの感想記事。
1ページめではヘーゼルナッツの花粉を用いた作品を紹介した。
続くこのページでは蜜蝋を使った作品を紹介する。

生命の営みが刻まれた蜜蝋をアート作品に活用

まず蜜蝋とは、蜂の巣から遠心分岐器で蜂蜜を取り出した後に残る巣の部分を湯煎で溶かしたもので、これに添加物を加え、建材用のワックスや保湿剤、キャンドルなど様々な用途に使われている。

ライプはこの蜜蝋を、1ぺーじめで紹介したヘーゼルナッツの花粉と同様、(ミツバチの巣作りという名の)生命の営みが刻まれた存在として、アート作品に活用している。

ファラオの棺が納められた棺室を連想させる蜜蝋の作品

ヴォルフガング・ライプ(Wolfgang Laib)《べつのどこかでー確かさの部屋 Somewhere else - la chambre des certitudes》
ヴォルフガング・ライプ(Wolfgang Laib)《べつのどこかでー確かさの部屋 Somewhere else – la chambre des certitudes》1996
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 – 非営利 – 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。

この高さが5mはあるような巨大な作品は、そのスケール感に圧倒されるとともに、非常に宗教的な雰囲気を感じた。
その理由は、表面の質感は石とは大きく異なるものの、大きな立方体が四方に敷き詰められた狭い空間が、古代エジプト文明におけるファラオ(王)の棺が納められた棺室を連想させたためである。

この空間に足を踏み入れると、その感覚がすっかり鈍ってしまった現代人でさえ、目には見えない「大いなる存在」の力を感じ、畏敬の念を感じずにはいられないのではないだろうか。

花粉の作品以上に宗教的な色彩が強く感じられる蜜蝋の作品

なお展示カタログの説明にもあるように、ライプは大学で西洋医学を学んだのち、医師ではなく芸術家の道へ進んでいるが、その背景として幼少期からの東洋思想への傾倒があげられる。

その思想が人工物よりも自然、視覚的な要素よりも目に見えない存在、客観性よりも全体性への関心へと繋がっていると考えられるが、蜜蝋の作品には、これらに加えて宗教的な色彩も強く感じられた。

続く最後のページでは大理石と牛乳を使った作品を紹介する。

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