いたみありさ著『学校では教えてくれないアーティストのなり方』
先日投稿した、日本人アーティストの海外活動を支援するJCATのオーナーの著書です。
同書の第一印象は決して良くなかった
同書のことはJCATのサイトで紹介されていためAmazonでチェックしたことがあります。
しかし同書のコメント欄には、数名のアーティストが役立ったとコメントしている以外は否定的な内容が多く、しかもそのようなコメントほど同意を示す沢山の「いいね」がついていました。
さらに表紙の装丁も非常にカジュアルなため、やはりコメントの書評にある通り、あまり専門的な内容ではないのではないかとの印象をその時は抱きました。
海外で活動するためのノウハウを分かりやすく紹介
ところがJCATに提出するバイオグラフィー等の書類には厳密な規定があり、その規定は同書を参照するようにと指示がなされていため購入したところ、その内容は第一印象を良い意味で裏切るものでした。
以前に旧サイトで紹介した『アート・インダストリー 究極のコモディティーを求めて』にも、海外向けのポートフォリオの作成の仕方など、日本人アーティストが海外で活動するためのノウハウが掲載されていましたが、本書には『アート・インダストリー』とは異なる視点で同様の情報が掲載されています。
いえ、むしろ『学校では教えてくれないアーティストのなり方』の方が、遥かに多くのノウハウが掲載されています。
日本人アーティストを扱うギャラリー経営者の著書だからこそ役に立つ
なおAmazonの書評には、いたみ氏の経営するギャラリーがコマーシャルギャラリーではなく、アーティストから参加料を取るタイプのものであることへの批判が掲載されていますが、私はそのまったく逆だと思います。
なぜなら、そうしたギャラリーにとって、無名の日本人アーティストの作品を扱うメリットはほとんどなく、したがって相手にされるはずがないと考えられるためです。
ですからむしろ日本人アーティストにも門戸を開く、いたみ氏のようなギャラリー経営者の著書だからこそ実用的と言えるのではないでしょうか。
(同書でも最初は日本人アーティストも扱うギャラリーへのアプローチを勧めています)
誇大感を刺激するのではなく、大多数の日本人アーティストの身の丈に合った情報提供がなされている
恐らく本書の内容は、キャリアの初めからコマーシャルギャラリーが扱ってくれると信じて疑わないような自己愛の病理に侵されたアーティストではなく、社会人として当たり前の水準の現実検討能力を有したアーティストであれば、自分の身の丈に合った情報が分かりやすく提供されていると感じられるのではないかと予想されます。
以上のように、私には非常に参考なった本ですが、その私の第一印象は大きく違っていたように、残念ながら本書のタイトルと装丁では誤解を招き、私のようなターゲット層の興味を喚起できないように思えます。
後日投稿する次のページでは、その点について詳述する予定です。
紹介文献
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