写真家 田尻健二のウェブサイト(Ver.3)。撮影した写真・展示情報・写真をはじめとしたアート情報などを掲載。今後の展示予定:2018年8月9日〜10月末(予定) NEW JAPAN PHOTO at HOTEL THE KNOT Shinjuku、8月21日〜8月25日 Pleiades Gallery at NY「We」、11月12日〜11月18日 トキアートスペース 個展「症状の肖像」

麻薬の街を「教育のまちメディジン」に変貌させたクリエイティブの力

『私たちのデザイン4 編集学』

京都造形芸術大学のウェブスクーリング科目「編集学」

『私たちのデザイン4 編集学』、現在籍を置く京都造形芸術大学のウェブスクーリング科目の教科書です。
芸術教養学科の科目のため、内容は編集学といってもエディトリアルデザインに留まらず、クリエイティブな発想法や生き方全般を学べるものとなっています。

麻薬の街が「教育のまちメディジン」に変貌

なかでも一番印象に残ったのが、第11章の「都市を編集する」でした。
「東京ピクニッククラブ」を主宰する建築家の太田浩史さんをゲストに迎え、世界各国のユニークな都市計画や公園が誕生した経緯などが紹介されていますが、そのなかでもコロンビアのメディジンの事例に強く惹かれました。

以前のメディジンは「メデジン・カルテル」と呼ばれる麻薬密売組織が暗躍する、治安の非常に悪い都市とのイメージが染み付いていました。
ですがノーベル平和賞を受賞したフアン・マヌエル・サントス大統領の主導のもと、麻薬密売組織を一掃したことで街の雰囲気は一変しました。
編集学で紹介されていたのは、麻薬密売組織を一掃した後の都市計画についてです。

ケーブルカーを道路代わりに張り巡らせる

同書によれば、メディジンではスラム街が犯罪の温床となっており、そのスラムは山間の急斜面に散在しているため道路を作ることさえ困難で、この交通の不便さが高い失業率の大きな要因となっていました。

そこで発想を転換し、道路の代わりにケーブルカーを町中に張り巡らせ、さらにそのケーブルカーの駅周辺に図書館を造り、その図書館を拠点として「教育のまちメディジン」を目指すことにしました。
(教育水準と所得の間には強い相関関係があることは、統計データにより明らかとなっています)
こうした施策の結果、メディジンでは犯罪発生率の低下などの具体的な成果が表れているそうです。

ケーブルカー自体は観光地でもお馴染みのものですが、それ交通インフラとして町中に張り巡らせてしまうというのは、なかなか思いつかない大胆な発想でしょうし、さらに教育の普及までをも視野に入れたことが、このプロジェクトの優れた点です。

もしメディジンの取り組みが単に麻薬密売組織を一掃するだけで終わっていたなら、高い失業率が元で、いずれまた「生活の糧のために」麻薬を利用せざるを得なくなっていたかもしれません。

このように都市計画とは単に景観をデザインするものではなく、クリエイティビティを発揮することで社会を変革する可能性を秘めています。
アートプロジェクトを一時的には盛り上がる「お祭りのようなイベント」に終わらせないためにも参考になる事例だと思います。

実際のメディジンの街の様子はこちらのページなどをご覧ください↓
【コロンビア】 わずか100円で楽しめる、メデジンの絶景ケーブルカー「メトロ・カブレ」。 | El Mundo

追伸)東京ピクニッククラブの活動も面白そうです。

追伸2)実は麻薬密売組織を一掃する際にもクリエイティブの力が大きく貢献したことがTEDでプレゼンされていました。
次回はそのことについて紹介する予定です。

参考文献

紫牟田伸子 著、早川 克美 編集『芸術教養シリーズ20 編集学―つなげる思考・発見の技法 私たちのデザイン4』、幻冬舎、2014年




写真家 田尻健二
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