ART TRACE GALLERYの諸岡亜侑未「Dig up and Build」の感想記事。
1ページ目のオープニング・パフォーマンスの感想に続いて、2ページ目は展示の感想です。
もっともすでに記事「作家が写された映像がもたらすプレゼンスと不在の感覚〜諸岡亜侑未「Dig up and Build」を例に」の中で、大展示室の展示の様子についてある程度触れましたので、ここでは入り口付近に置かれた彫刻作品に絞って感想を述べます。
無意識の世界への入り口を表象する、手前に置かれた彫刻作品
こちらが大展示室の手前に置かれた彫刻作品です。素材は確か大理石だったと思います。
よく見ると真ん中あたりに小さなドアがあり、そこから中に入ろうとしている男性が彫られています。
この部分から次のような連想が働きました。
今回の諸岡亜侑未「Dig up and Build」は、展示全体がユング心理学の技法である箱庭をテーマに制作されていますが、その箱庭によって表現される光景には、作り手の無意識が投影されていると考えられています。
さらにここでの無意識とは、「無意識に〇〇する」という慣用句における「無自覚」の意味ではなく、簡単には意識化できない心の領域のことを指しています。
(この点は精神分析も同じです)
これらのことから、手前に置かれた彫刻作品は、大展示室という無意識の世界への入り口を表しているように思えました。
補足) 大展示室には、オープニング・パフォーマンスによって制作された4つの箱庭を通じて、作家である諸岡さんの無意識の領域が存在しています↓
またこのように考えると、幅1m近くあるこの彫刻作品が、大展示室への進路を遮るように置かれている様は、この地点が意識と無意識との境界であることを示しているようにも思えました。
無意識の世界が簡単には意識化できないものであることをも巧みに表象
それだけはありません。既述のように、この彫刻作品には、中央に小さなドアが彫られていますが、この小ささこそが、無意識の世界というものが簡単には意識化できない(=見つけられない)領域であることを暗示しているようにも思えました。
以上のように、大展示室の手前に置かれた彫刻作品は、その設置の仕方も含めて無意識の世界の性質が巧みに表象されているように感じられました。
諸岡亜侑未「Dig up and Build」は3月22日(日)までです。
お時間がございましたら、ぜひ両国のART TRACE GALLERYまでお越しいただき、無意識の世界をご堪能ください。
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