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企画「校則破り」は、まずは所属のART TRACE GALLERY(以下ATG)での実施を検討することになったため、このページではそのことを前提とした実施案を提示する。

企画「校則破り」の意図

この記事の1ページ目2ページ目を参照

実施案(上記1ページ目に関して)

本企画は作家活動全般に渡る公式・非公式のルールを批判的に検証し、必要ならその修正を試み、その成果物を展示の形で公開するものである。
しかしその実施のための規定を事細かに定めたのでは、本規格の趣旨と矛盾してしまう。
その新たに設けられたルールが、批判的に検証されることなく参加作家に押し付けられることになってしまうためである。

このため参加作家は、展示に先立ち、方法論も含めて話し合いによってこれから実施したいことを決めて行くことが望ましい。
唯一制約があるとすれば、法律の遵守くらいである。

実施案(上記2ページ目に関して)

本企画はあらゆる慣習に挑戦することから、2ページ目で周囲の利害関係者との間に衝突が起きる可能性があることを示唆した。
ATGの場合、その利害関係者とは、主に展示に参加しない他のメンバーや当番者である。

ATGでは展示の実施やギャラリーの運営などのためのルールが事細かに定められており、その数は今も増え続けている。
したがって本企画の参加作家がこれまでと違ったことをやろうとすれば、ほぼ確実にこれらの利害関係者からの、時に激しい抵抗に遭うことが予想される。

もっともその抵抗を受け入れるか否かは参加作家の自由であり、またその経緯を展示その他で公開するか否かについてもまったく同様である。
しかし普段無自覚に受け入れがちな制度に焦点を当てることが本企画の意義であるため、これまでに定められたギャラリー内のルールをすべて守ることを前提としていたのでは、その意義が半減してしまう。

この点は経緯を非公開とする場合もまったく同じである。なぜなら物事は公にされ人目に触れることで初めて考察対象になり得るためである。
対照的に権力を有するものは、物事を秘密裡に進めることを好み、それが公にされることを極度に嫌う。

以上のように「校則破り」をATGで実施する場合の校則とは、主にATGという組織内で定められたルールとなることが想定される。
これは次のページで詳しく述べる予定だが、本企画が先日紹介したパフォーマンス研究の理念の影響を強く受けており、同研究では何より当事者性が重視されているためである。

参加作家 募集要項

通常は展示の円滑な実施を考慮して企画者が展示の日程や参加人数、募集期限などを定めるのがセオリーであろうが、これまでの話から明らかなように、これらの慣習も当然ながら批判的検証の対象となる。

したがって参加作家が当番の負担などを考慮しつつこれらの項目について主体的に定めることが望ましく、必要であればメンバー外の作家を展示に誘っても構わない。すべては他のメンバーとの交渉次第である。

しかしこのような試みは、参加作家への負担が必然的に大きくなり、その結果展示の準備が間に合わなくなってしまう恐れがある。
しかし仮にそうなってしまった場合でも、それまでに出来上がった成果物を展示すれば良いと思っている。
それもまた「完成作を展示する」という常識に挑戦する「校則破り」なのだから。

企画者の私が作家としても参加する場合はアイディア出しは最小限に

なお私自身もできれば一作家として展示にも参加したいと考えているが、その場合当然ながらこの企画に最も精通しているのだから、特に意識せずとも私がリードしがちになってしまうことが予想される。

これは知識の違いが生み出す権力構造の一例であるが、本企画は2ページ目でも引き合いに出したカルチュラル・スタディーズをはじめとした批判理論の信念を念頭においている。
そのためこのような権力構造は極力排除することが望ましく、したがって私はアイディア出しは最小限に留めたいと考えている。

鑑賞者へのお願い

最後に本企画がめでたく実施された暁には、鑑賞者の方はぜひ展示内容を温かい目で見つめていただきたい。

各々の制度は、それが適切なものであれば多分に合理性を有し、それに従うことで効率が増すことが期待できる。
本企画の参加作家は、そのメリットをあえて放棄しているのだから、従来の基準で推し量られるようなクオリティは犠牲とならざるを得ない。
したがってその点よりも、むしろ成果物が生まれるまでのプロセスや、そこでの各々のパフォーマンスと相互作用(=コミュニケーション)に関心を示していただくことを切に願うばかりである。

なおこの企画内容に対して、何もわざわざ波風を立てる必要はないのではないか、もっと別の事柄に批判の目を向ければ良いのではないかと思われた方もいらっしゃるかもしれない。
この点に関してはページの中程でも述べたように、それでは肝心の当事者性が失われてしまう。次のページではその点について詳述する予定である。

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