要約:森美術館「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」に展示されたオノ・ヨーコのインストラクション(指示)作品に触れて初めて、詩という芸術の楽しみ方を知った気がした。
森美術館で「カタストロフと美術のちから」に続きオノ・ヨーコの作品を拝見
森美術館「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」の感想記事。
ヴォルフガング・ライプ、エレン・アルトフェストに続いて紹介するのはオノ・ヨーコ。彼女の作品を拝見するのは同じく森美術館で開催された「カタストロフと美術のちから」以来である。
想像力を喚起するインストラクション(指示)作品
今回のオノの作品はインストラクション(指示)と呼ばれるジャンルで、〇〇せよと行為を明確に促すものではないが、例えば今回の展示タイトルにもなっている「地球がまわる音を聴く」などとある行為を提示することで、暗にその行為を促すスタイルをとっている。
もっともその行為は「地球がまわる音を聴く」の他にも次の作品の「心臓の鼓動を聴く」というように実現不可能なものがほとんどである。
そしてだからこそ私たちはこうした行為をあえて試そうなどとは思わないのであるが、展示目録には戦時中の飢餓体験をもとに、オノが困難な状況のときほど想像力が必要であると考えていることが示されている。
「詩」を感覚で捉える発想
なお既述のように今回のオノの作品はインストラクションというスタイルを採っているが、鑑賞時はまだその知識を持ち合わせていなかったため、私はオノの作品を「詩」と捉えた。
そしてこれまで詩という芸術ジャンルに対して抱いていた「いくら思考を働かせても理解できない非常に難解なもの」というイメージが、思考ではなく感覚で捉え想像力を駆使して感じれば良いものへの変化した。
こうして作品ジャンルの誤解というハプニングも手伝って、詩という芸術が私にとって身近な存在となったのである。
次回は「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」の感想記事の最後として、飯山由貴の映像作品を取り上げる。
森美術館「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」公式ページ
(展示はすでに会期終了)