パオロ・コニェッティ著『帰れない山』

パオロ・コニェッティ著『帰れない山』〜個人的に映画『小さな恋のメロディ』を連想した、ワクワクする描写に満ちた小説

今回の記事はオススメの小説の紹介です。

先週、イタリア文化会館で文学に関する2つのトークイベントを聞きに行きました。
1つは「背後の世界」で、もう1つは「帰れない山」です。

実はお目当ては、バンド活動をされていた頃から大ファンの町田康さんが対談相手で登場する「背後の世界」の方でした。
双極性障害がテーマということも、カウンセラーという仕事柄、興味がありました。

ところがトークの内容に引き込まれたのは、意外にも序でに申し込んだ「帰れない山」の方でした。

『帰れない山』の二人の出会いのシーンから映画『小さな恋のメロディ』を連想しワクワクする

トークはまず対談相手の、出版元の新潮クレスト・ブックスの松家仁之氏による小説『帰れない山』や著者のパオロ・コニェッティ氏の紹介から始まり、序でコニェッティ氏による『帰れない山』の朗読、続いて二人のトーク、最後に質疑応答という流れでした。

イベントの中で一番印象的だったのは、コニェッティ氏による『帰れない山』の朗読のシーンでした。
朗読では主人公の僕と、その後親友となるブルーノとの出会いのシーンが語られましたが、聞きながらすぐに映画『小さな恋のメロディ』を連想しました。

大人っぽく、かつ粗野な印象の相手に主人公が惹かれ、兄のように慕う様子が重なったためです。
さらに松家氏も絶賛するように、背景の自然なども含めた描写が素晴らしく、字幕を追いながら朗読を聞いているだけでも情景がありありと浮かんでくるようで、とてもワクワクしている自分に気づきました。

文化の違いを超えた普遍的な感覚を呼び覚ます小説

またこの点も松家氏から指摘がありましたが、小説の構成は目新しいものではなく、むしろどこか懐かしささえ感じられるものですが、それゆえ文化の違いを超えた普遍的な感覚を呼び覚ますもののように思えます。

イベント終了後にコニェッティ氏のサイン会が設けられていたため、小説を購入してサインをいただきたかったのですが、長蛇の列ができており、またこの後京都造形で港千尋氏による風景の写真論の講義を聞きに行くため止むを得ず会場を後にし、小説は後日池袋で用事を足した序でにジュンク堂で購入しました。

新刊本につき、これ以上のネタバレは控えますが、とにかくオススメの一冊です。

紹介文献

パオロ・コニェッティ著『帰れない山 (新潮クレスト・ブックス)』、新潮社、2018年

追伸)ちなみに普段は専門書を読むのに手一杯なため、小説を買ったのはカズオ・イシグロ著『私を離さないで』以来です。

パオロ・コニェッティ著『帰れない山』
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