前回の「HB WORK Competition vol.5 受賞者12人によるグループ展」に続いて、「HB FILE COMPETITION vol.35 特別賞5人によるグループ展」も拝見してきました。
まずはfechukel(フェチュケル)さんの作品の感想を掲載いたします。
fechukel(フェチュケル)さんの作品感想
マティスの肘掛け椅子のような作品
fechukel(フェチュケル)さんの作品の特徴は、エアブラシで製作されているため、ピントがアウトフォーカスになっていることです。
その意図は「作品鑑賞を通してリラックスして欲しい」とのこと。
作品を見て意味を探ったりするのではなく、ただぼんやりと眺めてリラックスしたひと時を過ごして欲しい…そのような意図が込められた作品です。
私は知りませんでしたが、アンリ・マティスが生前「人々を癒す肘掛け椅子のような絵を描きたい」と語っていて、fechukelさんもそのような作品作りを目指していらっしゃるようでした。
リラックスすることで知覚も変化する
このfechukelさんの想いやマティスの話を聞いていて、フロイトの「平等に漂う注意」や、シャーマニズムの「狩人」の概念が連想されました。
両概念では、ぼんやりとした知覚の仕方が、心のバイアスを取り除き、さまざまな気づきを得るために欠かせないことが示唆されています*。
fechukelさんの作品も、鑑賞することでリラックスできるだけでなく、知覚に変化が生じることが期待できるかもしれません。
*詳しくは別途記事にする予定です。
「手放す」ことがテーマの作品
また左上の作品は「手放す」ことがテーマとなっていました。
私は花を蝶と誤認して、手から蝶を離してあげるところを連想するとともに、give awayと呼ばれる大切なものを手放す心理学的なワークのことを思い出しました。
こちらは近日中にカウンセリングのサイトで記事にする予定です。
以上のようにfechukelさんの作品からは、心理学的な事柄がいろいろと連想され、アートと心の領域を結びつけるようなワークショップのヒントをいただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。
参考サイト・文献
ピカソのライバル!「肘掛け椅子のような」絵を描きたかった巨匠・・・~アンリ・マティスとその時代 – 銀座の絵画販売・買取の画廊- 翠波画廊
フロイト著『精神分析学入門』、中央公論新社、2019年
アーノルド・ミンデル著『シャーマンズボディ : 心身の健康人間関係コミュニティを変容させる新しいシャーマニズム』
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