2021年の2月から3月にかけて所属のART TRACE GALLERYで開催された個展「ミメーシス」の展示を振り返る記事。
1ページ目では会期前半の様子を紹介しました。
続くこのページでは会期後半の展示の様子を紹介いたします。
展示風景(会期後半)
こちらが会期後半の展示の様子で、立体作品が設置されていたスペースです↓
会期前半との変更点は、太田翔さんに制作を依頼した架空の男性の人物像を追加したことです。
たった一箇所の違いですが、この人物像があるとないとでは、鑑賞者が受ける印象が大きく違ってくると予想しました。
例えばアート作品の展示では、作品が主役でテキストは補足的な資料との暗黙の前提でもあるのか、テキストには目を通さずに帰っていく人が少なくありません。
こうしたケースの場合、会期前半の展示スタイルでは恐らく何を表現しているのか分からないのではないかと思います。
しかし太田さん制作の男性の人物像には性器がつけられ、その像がベッドに寝そべっており、さらにその上から奇妙な形とはいえ何かが腰のあたりに覆い被さっているのですから、勘がよい方はどのような行為を暗示しているのか容易に察しがついたことでしょう。
男性像を性欲そのものが実体化した化け物のような存在に見立てたかった
続いて1ページ目でも予告いたしました、男性像を下半身のみとし、ベッドもそれに合わせて半分の長さにした意図について触れます。
もしリアルさを追求するのなら全身の人物像を等身大で製作し、なおかつ素材や制作手法についても可能な限り人間の皮膚を再現できるものを選択するのがベストでしょう。
しかし今回の展示タイトルが示す古代ギリシャにおける「ミメーシス」の概念とは、日本語では模倣と訳されてはいますが、その実情は対象の造形を忠実に写しとる模写とは大きく異なり、(目には見えない)本質の再現、つまり多分に精神的な要素の表象です。
そしてこのミメーシスの概念に即して1ページ目に示した夢の内容を解釈すると、そこで展開されているのは、男性に焦点を当てれば欲望をコントロールする理性が欠如した世界というものでした。
そこで理性が欠如した本能むき出しの状態を象徴するものとして、下半身のみの男性像を登場させました。
これは下半身という言葉がしばしば性器の部分のみを指すように、身体の中でも上半身は理性の、下半身は本能の象徴との考えが存在するように思えるためです。
このように私にとって下半身のみの裸体の、しかも人間とは思えない質感の皮膚を持つ人物像は、心を宿した人間というよりも、性欲そのものが実体化した化け物のような存在を象徴するものでした。
追伸) 料理ブログで、クロージングパーティで用意した、ビア&カフェBERG(ベルク)の絶品料理を紹介しました。
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