NO IMAGE

大城夏紀 「 山と荒磯 dal segno 」感想〜平安貴族の生活や美意識に触れる心地良さ

今日、所属のART TRACE GALLERYで当番業務をこなしながら、大城夏紀 「 山と荒磯 dal segnoを拝見しました。

大城夏紀 「 山と荒磯 dal segno 」感想

大城氏は今年、シェル美術賞 レジデンス支援プログラムに選出されるなど注目の作家ですが、私自身も彼女の作品がとても好きで、以前にも感想を書いたことがあります。
アートトレイスギャラリー 大城夏紀 個展 < pianissimo >感想~寝殿造のジオラマを眺めているような心地良さ

その時は描かれたモチーフが両国の駅の構内であるにも関わらず、寝殿造の家屋を連想したためか、今回の日本庭園をモチーフとした作品を拝見した際にも、その印象に引きずられたのか、やはり平安時代の庭園を連想しました。
こちらは床面に配置された作品の一部です。

大城夏紀 「 山と荒磯 dal segno 」展示風景

「遊び」の感覚

最初にこれらの作品を目にした時は、時代背景として平安時代を思い浮かべると同時に、遊びのような感覚も感じられました。
それはもしかしたら球体の作品から蹴鞠(けまり)が連想されたのかもしれませんが、そうした具体物のみならず、もっと漠然としたものも含めて感じられました。

私の理解では、当時の貴族はそれほど働く必要はなく、国からの支給や荘園からの収入で十分に食べていけたため、多くの時間を遊びや教養を得るために費やしていたようです。
ですから私が感じた「遊び」の感覚は余暇に近いもので、当時の貴族の仕事以外の日常生活全体を感じ取っていたのかもしれません。

平安貴族の美意識

またそうした感覚に浸っていると、例えば四角い紙が重ねられたような作品が襲の色目(かさねのいろめ)にも見えて来ます。
襲の色目とは十二単(十二単衣、じゅうにひとえ)などの配色の様式で、例えば赤い着物の上に白い着物を重ねて桜色に見立てるなど、その様式は単なる配色パターンではなく季節を楽しむための工夫でもあったようです。

その意味で私が感じ取っていたのは、彼らの余暇の過ごし方を通して、貴族文化の美意識にも触れていたのかもしれません。
以上のようなことなどを感じながら、時間がゆったりと流れる心地良さに浸れる展示でした。

もっともステートメントを読む限り、大城氏は造形に関する非常に抽象的な思考でもってこれらの作品を作り上げたようですので、私が感じ取った事柄の多くは私個人の属性から生じたものでしょう。
私は15年ほど前まで印刷会社でデザイナーをしておりましたが、その当時「色」に惹かれ色辞典のようなものを何冊も持っておりましたので、その当時から続く興味関心の影響が大きいのではないかと考えられます。

何分、連想魔なもので、どうしてもこうして制作者の意図からドンドン外れた感想になってしまいがちで、申し訳なくはあります…

展示は9月25日までで、木曜日は休廊です。

ART TRACE GALLERY 大城夏紀 「 山と荒磯 dal segno 」

NO IMAGE
最新情報をチェック!