先週、行きつけの美容室で雑誌Pen「アートの値段」を読んだところ、私にも参考になる情報が分かりやすく書かれていたため、お店を出た後に紀伊國屋書店で購入しました。
アート作品の価格の決定要素が分かりやすく解説された本
特集タイトルは「アートの値段」ですので、作品の価格やアート市場の規模などについて書かれていますが、本特集の最大の特徴は、そのアート作品の値段を決める要因にまで踏み込んでいることです。
具体的にはPOWER100と呼ばれるアート界に影響力を持つ人々のランキングの紹介です。
(恥ずかしながら先日紹介した『現代アートとは何か』を読むまで、私はPOWER100のことを知りませんでした)
またそのPOWER100の上位にランクされている、キュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリストのインタビューや、同じく上位にランクするギャラリストの記事なども掲載されています。
加えて本特集には、次のような内容も網羅されています。
・二大オークション会社、クリスティーズとサザビーズ
・映画で話題となったコレクター、ハーブ&ドロシー夫妻
・コレクターが開設した私設ミュージアム
・日本における戦前までのコレクター史
・日本のアートと関わりを持つ他業種の企業
・中世ヨーロッパの作品売買の様子
・転売により名画の価格が高騰していく経緯
以上のようにPenの特集「アートの値段」では、アートの金銭的な要素に留まることなく、その形成要因についてもかなり網羅的に紹介されているため、アート作品の価格の決定要素が大雑把にでも把握できる内容となっています。
しかも一般のカルチャー誌ゆえ、それをできるだけ分かりやすい解説によってです。
(現代)アートの普及に一役買っているPenとBRUTUSのアート特集
前述の『現代アートとは何か』の最後の方で、著者の小崎哲哉さんが、日本の専門誌の(狭義の)アート・ワールドの住人のみを対象としているかのような難解な記述や、あるいはマスメディアにおける現代アート作品のヴィジュアルのインパクトのみを伝えるような姿勢を指して、現代アートの普及や理解促進にほとんど役立っていない旨の苦言を呈していらっしゃいます。
その意味で、今回の「アートの値段」のような内容の特集を組むPenや、あるいは以前に「自然写真入門」の号を紹介したBRUTUSなどのカルチャー誌は、その例外と言えるかもしれません。
なぜなら両雑誌のアート特集の内容からは、とかく難解になりがちな(現代)アートを何とかして分かりやすく伝えたいとの想いが伝わってくるためです。
補足)すでにバックナンバー扱いとなっておりますが、紀伊國屋書店にはまだ5冊以上置かれていました。
紹介文献
追伸) オブリストに関しては著書の翻訳本や関連書籍が多数あるようですので、一度読んでみたいと思っています。