ART TRACE GALLERY「風の振る舞い」の感想記事。
1ページ目のステートメント、2ページ目の各展示作家の作品の感想に続き、このページでは入り口の右手にあるスタッフルームに併設された小展示室の感想を記載します。
小展示室のリサーチの概要
このスペースにはリサーチと称される、展示のコンセプトに関連した様々な調査や考察、アイディアなどが展示されており、こちらも非常に充実した内容でした。
こちらがその概観です↓
私の記憶が正しければ、左側のゴッホなど著名な絵画作品の「風」や「空気」を軸した解釈は上田和彦さん、中央の中世の頃までの様々な発明品についての考察や立体作品は向井哲さん、そして右側の身の回りや自然の事物の「回転の方向」に着目しスケッチにまとめたものは民佐穂さんによるものです。
本当は展示を実際にご覧いただければ良かったのですが(10月20日で終了)、このスペース全体のリサーチはどれも分かりやすく、かつ多様な視点に基づくものであったためか、風や空気あるは大気に関する見識が自然と広がるような構成となっていました。
リサーチが展示に欠かせない要素と感じられるほど充実していた
このため今回拝見した「風の振る舞い」のリサーチ内容は、単に作品を補足するための資料に留まらず、それ自体が造形芸術とは異なる手法で「風の振る舞い」に迫るものであり、したがって必然性が感じられました。
実際、来場者の多くが小展示室にも足を踏み入れ、それぞれのリサーチを熱心にご覧になっていました。
普段のART TRACE GALLERYの展示では、大展示室の作品のみをご覧になったり、あるいは小展示室に足を踏み入れても短時間で出ていく方が多いことを考えると、これは異例の事態です。
なお個人的には上田さんによる絵画の解釈と、民さんのスケッチが特に興味深かったです。
上田さんの絵画解釈は、ゴッホの作品のように風の作用が一目瞭然なものから、指摘されて初めて意識するようになった作品まで、非常に多様な視点からの考察なされていました。
また民さんのリサーチは、身の回りの品から自然現象まで、様々な事柄の回転の方向に着目したものですが、反時計回りのものが多いことが意外でした。