特定の画家や様式から「モチーフ」へと焦点が変化
MXテレビやTVKなどで放送中の「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」が、今年の4月にリニューアルされました。
これまでのアート・ステージは特定の画家や様式などに焦点が当てられていましたが、それがモチーフへと変更されました。
その結果、よほど描かれた歴史が浅いモチーフでない限りは必然的に歴史縦断的な内容となり、またそのことで描かれた時代の社会的な背景(文脈)もより重要となるため、その説明も増えました。
例えば少し前に放送された「子ども」をモチーフとした回では、(今日では想像もつかないことですが)子どもが小さな体をした大人と考えられていた時代と、その後の子ども独自の特徴を認識するようになった時代とを対比し、それぞれの時代の子どもをモチーフとして描かれた絵画の特徴の違いに焦点が当てられていました。
また今週放送された「イギリスの風景画」の回では、アラン・コルバンが『風景と人間』でも詳述しているピクチャレスクと、その後のターナーらの絵画とを比較し、心の中の理想的な風景を現実に投影するかのように描かれた絵画から、目の前の現実の光景を元に描く絵画へと変化していった経緯が紹介されていました。
マスメディアから名画にまつわる社会的文脈が紹介されることの意義
こうした内容は(西洋)美術史の専門書にも書かれていることですが、一般の方の目に触れる機会はほとんどないはずです。
その意味でも、マスメディアからこうした単に名画の数々を紹介するだけでなく、その社会的文脈と共に情報が発信されることは、意義あることではないかと思います。
なぜならそうした経験が、アートを高尚な存在から、現実社会と不可分に結びつき、それとの相互作用により変化し続けている存在であることを認識する一助になると考えられるためです。
そのため専門教育は受けたことはないがアートには興味があるという方にこそ、ぜひご覧いただきたい番組です。