先日、HBギャラリーで春日井さゆり個展「プラスチックリリヤン」を拝見しました。HB FILE COMPETITIONで鈴木久美賞を受賞された方の個展です。
会場にはお客様が多数いらっしゃり、直接お話を伺うことはできませんでしたが、作品は素晴らしいものでした。
画面の隅々まで行き届いた注意力
展示作品全体をとおして感じられたのは、画面の隅々まで行き届いた注意力の高さです。
私が初展示の時にお世話になった先生から教わったことの一つが、(写真の)画面の中には、見せたいものだけを写し込み、見せたくない要素は全て排除するようにフレーミングしなさい、というものでした。
その点、こちらの作品などは、メインと思われる人魚のモチーフに、窓と食器が一見シンメトリーに思えるものの、わずかに中心をずらして配置されると同時に、天井に行手を遮れて窮屈さを感じる風船と、海と床とがシームレスに繋がる不思議な景色がアシンメトリーに配置されることで、全体として最小限のモチーフでシュルレアリスムの雰囲気を醸し出すことに成功しているように思えます。
展示タイトルの要素をさり気なく配置
また展示タイトル中のリリヤンとは手芸用の紐を指す用語ですが、その紐状の物体が複数の作品にさり気なく描かれており、展示全体の世界観の統一に一役買っていました。
以上のように春日井さんの個展は、モチーフすべてが慎重に描かれており、その研ぎ澄まされた感覚から生じる緊張感がひしひしと伝わって来るような展示でした。