「絵画のゆくえ2019 – FACE受賞作家展」感想

先日ありがたいことに「絵画のゆくえ2019 – FACE受賞作家展」の展示作家の方から招待券をいただいたので、最終日に拝見して来ました。
30分ほどの時間でしたので作品1点1点をゆっくりと拝見することはできませんでしたが、それでもとても充実した時間を過ごすことができました。
今回は特に印象に残った作品を紹介致します。

遠藤美香さんの作品感想

まず入ってすぐの小スペースの手前側には、遠藤美香さんの作品が展示されていました。
設立当初からFACE展にはモノクロームの作品が上位入賞する傾向があるように感じていましたが、2016年のグランプリ受賞者の遠藤美香さんの作品もその1つです。

「絵画のゆくえ」はグランプリ・優勝賞受賞者のその後の作品を展示するものですので、こちらの作品《カーテン》は2017年に制作された木版画です(クリックで拡大表示)。

同時代性

前年のグランプリ受賞作《水仙》をFACE展で拝見した時は気づきませんでしたが、カーテンの柄の部分をよく見ると、エッジがドット絵のような四角形のギザギザで表現されていました。
このようなエッジの形状は自然界には恐らく存在せず、人工的なデジタル画像特有の形状と考えられ、その意味で同時代性が意図されているように思えました。

鑑賞者の心をフックする重層的な構造

また完全なモノクロームの世界というものも同じく自然界には存在せず、それゆえこうした表現手法は非現実的な印象を与えます。
さらに他の作品も含めて描かれているアイテムなり情景は、いずれも日常的なものばかりです。

こうした要素も考慮しますと、遠藤さんの作品には非現実的でありながら同時に現代の空気感をも内包しているという相矛盾するような性質*が同居し、さらには鑑賞者の個人的な連想を促すような日常的なモチーフが散りばめられていると考えられます。

*もっとも現実感覚の希薄さが、現代人の特徴とも言えなくもないですが…

そしてこのような重層的な構造が、シンプルでありながらも、どこか気になって(フックされて)見入ってしまう魅力を生み出しているのではないかと考えられます。

次のページでは、同じスペースの奥に展示されていた唐仁原希さんの作品の感想を掲載致します。

「絵画のゆくえ2019 – FACE受賞作家展」展示案内

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