『展示の政治学』〜キリスト教美術の偶像崇拝・聖像・イコン・聖遺物などの意味や歴史が分かりやすく書かれた本

今回も先日紹介した『展示の政治学』に関する記事です。

同書の第3章では「画像の展示と秘匿」と題して、キリスト教美術における偶像崇拝・聖像・イコン・聖遺物などの重要な概念の意味や歴史について、ベンヤミンの礼拝的価値の理論を参照しつつ考察されています。

西洋美術史の理解に欠かせないキリスト教の概念

西洋美術史を学んでいて感じるのは、キリスト教美術の重要性です。
美術史の大部分が、このキリスト教美術に関するものと言っても過言ではありません。

またキリスト教美術では、その造形物が信仰や布教のための手段として制作されたものであるため、それに拘束されていると言って良いほどキリスト教の概念の強い支配下にあります。
ですからキリスト教の概念が理解できなければ、各造形物について深く理解することはできません。
最低でも既述の偶像崇拝(の禁止)・聖像・イコン・聖遺物などの概念の理解は必須と考えられます。

日本人には理解が難しいキリスト教の概念と美術との関連を分かりやすく解説

ですが大部分の日本のアート関係者にとっては、信仰はもちろんのこと文化にも慣れ親しんでいないため、なぜそこまで強い制約を受けるのかなかなか理解できないのではないでしょうか。

この点、美術史家でもいらっしゃる神戸大学大学院人文学研究科教授の宮下規久朗さんの執筆による第3章は、他に類を見ないほどの分かりやすさで偶像崇拝(の禁止)・聖体・イコン・聖遺物についての説明がなされています。

また同章では仏教美術との比較も行われているため、より深くキリスト教美術の特質を知ることができます(もちろん仏教美術の理解も)。

同書はあくまで展示の政治学(権力構造)について考察することを主眼に置いていますが、これだけ分かりやすくキリスト教美術の特質を解説していただけると、その理解のためにもお勧めしたくなります。
そこで再び紹介することにしました。

紹介文献

川口幸也編『展示の政治学』、水声社、2009年

広告
最新情報をチェック!