今回の記事は、先月まで所属のART TRACE GALLERYで開催されていた広瀬真咲 個展 [ 生態学4 meta + pulse ]の感想です。
なお私が当番をした最終日は、展示作家の広瀬さんと、共通の知人の、70年代から前衛的な活動を続け、5月の私の企画「Diversity vol.2」にも参加いただく万城目純さんと3人でディスカッションもできるなど、有意義なひと時を満喫できました。
今回の個展[ 生態学4 meta + pulse ]でも、これまでの生態学シリーズ同様、ご覧のような鳥を連想するような作品が展示されていました。
プライベートな蔵書を開示
しかし今回の個展がこれまでのものと大きく異なる点は、プライベートな側面の開示です。
ご覧のように、本棚にプライベートな蔵書が置かれ自由に閲覧できたことで、これまで以上に作品の背景への理解が進みました。
ユニークな視点に基づく作家活動
本棚には遺伝子、個体発生と系統発生、パフォーマンスアートなど、個人的に興味をそそられる本が何冊も並んでいました。
そしてポートフォリオには、シャーマニズムに強い関心がある旨の記述。
さらには今回の展示での、種の境界を超えた先祖への言及。
これらの情報から、広瀬さんが個体としての自己(自分自身)と周囲の世界、特に他の生物、さらには時空を超えた(共通の)先祖との繋がりを意識しながら作家活動を続けていらっしゃる方と実感しました。
今、特に現代アートの分野では、洋の東西を問わず思考偏重、さらにその思考内容も西洋哲学偏重の傾向を強く感じます。
こうした傾向が非西洋諸国にも広がっているのは、もしかしたら自身の作品がオリエンタリズムやオルタナティブとして評価されてしまうのを嫌ってのことかもしれませんが、広瀬さんの作品やその制作スタンスは、この風潮と一線を画する非常にユニークなものです。
加えて広瀬さんの作品は、精神世界を表したヒーリングアートの作品とも異なる印象を受けます。
これは広瀬さんが、生命の不思議な世界に惹かれながらも、精神世界にどっぷりと浸かるのではなく、むしろ自然科学や人文科学に強い関心を寄せていることから、もたらされたものではないかと考えられます。
これからもそのユニークな視点を保ちつつ、作家活動を続けていただきたい方です。
ART TRACE GALLERY 広瀬真咲 個展 [ 生態学4 meta + pulse ] 展示案内
追伸)2ページ目に、広瀬さんの蔵書の中で特に気になった、黒ダライ児著『肉体のアナーキズム』の紹介記事を書きました。
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