バイロ・マルティネス《オルビス・テラルム》@「TERRESTRES:ラテンアメリカ・コンテンポラリーアートへの接点」の感想

Takaaki Kumagai氏キュレーション「TERRESTRES:ラテンアメリカ・コンテンポラリーアートへの接点」の感想記事その4。
シェイラ・デ=ラ=クルス氏に続いて紹介するのは、バイロ・マルティネス氏の絵画作品です。

バイロ・マルティネス氏の絵画作品《オルビス・テラルム》の概要

こちらがマルティネス氏の絵画作品《オルビス・テラルム》(Bairo Martinez “Orbis Terrarum”)です。

作品タイトルのオルビス・テラルムは、日本語に訳すと風景となり、同作品には真っ黒な画材でアンデスの山岳風景が描かれています。
また荒々しくも重厚感が感じられる質感は、木炭ではなく石炭で表現されており、この点がマルティネス氏の絵画作品の大きな特徴です。

歴史的・社会的背景に基づき画材を選定

通常、画材の選択基準は、その物理的特性によるケースがほとんどと考えられますが、マルティネス氏の場合は、画材となるその物質の歴史的・社会的背景が重要な意味を持っています。

展示カタログのKumagai氏の批評によれば、石炭はマルティネス氏の暮らすコロンビアのメデジン市の近郊で産出する身近な鉱物であると同時に、近年の多国籍企業の進出の影響により閉山の危機に瀕しているように、グローバリズムの負の側面の象徴でもあります。

つまりは単に荒々しい質感を出すためだけに、石炭を使用しているわけではないのです。

日本にもマルティネス氏のような物理的特性以外の要因から様々な素材を用いる人はいますが、その多くはインスタレーションで、平面作品では思い浮かびません。
その意味でも非常にユニークな作風との印象を受けました。

参考文献

「TERRESTRES:ラテンアメリカ・コンテンポラリーアートへの接点」展示カタログ

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