1980年代の路上観察学を拡張したコンセプト
先週、Up & Comingでグループ展「やわらかなスーパー・ハイウェイ」を拝見しました。
展示の起点は、1980年代に赤瀬川原平らが提唱した路上観察学らしく、こちらはトマソンと呼ばれる、都市の中の無用と思われている存在に焦点を当てるものでした。
「やわらかなスーパー・ハイウェイ」のコンセプトは、この路上観察学の「物質の発見」という観点に「関与」というアクションを加えるというもので、個人的には2010年代から注目され始めたソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)との関連を連想しました。
對中優「Divers Circle」
展示の中で特に興味を惹かれたのは、對中優(Masaru Tainaka)さんの「Divers Circle」という作品でした。
「ベトナムの路上にて働く配車アプリのドライバーと、その営みの周辺に現れる「円」という形態」に着目した作品です。
1980年代に行われた路上観察の多くが、都市の中の無用と思われる存在単体の発見であったと考えられるのに対して、對中さん
は、発見された個々の形態に「円」という共通項を見出し、さらに「円」という形態が生じる要因に関する仮説を提唱しています。
對中さんの作品はこのように緻密なコンセントに基づいているためか、私の心中には以下のように次々と疑問が湧いてきました。
・なぜベトナムなのか? そしてベトナムへは作品制作のために向かったのか? それともベトナムを旅行していて、展示に関連するアイディアを思いつき、滞在制作することになったのか?
・配車アプリのドライバーにまつわる様々な形態の円は、どのようにして「発見」されたのか?
見た目にも楽しめる作品も存在
また對中さんの展示には、コンセプトの緻密さだけでなく、写真のような見た目にも楽しめる作品も存在していました。
何度見ても本物の人間にしか見えませんでしたが、長時間微動だにしないというのは人間にはできない芸当のため、おそらく制作物なのだと思います。
展示は6月21日(日)までです。
6月6日(土)にトークイベントがあるようですので、都合がつけば聞きに行こうと思っています。
Up & Coming「やわらかなスーパー・ハイウェイ」公式ページ
参考文献
アート&ソサイエティ研究センター SEA研究会編『ソーシャリー・エンゲイジド・アートの系譜・理論・実践』、フィルムアート社、2018年