斉藤真起個展『雨沛下 あまはいくだる』感想

前回紹介した長嶋由季個展『Our voice becomes their song(私たちの声は、やがて彼らの歌になる)』の後に、トキ・アートスペースで斉藤真起個展『雨沛下 あまはいくだる』を見てきました。
斉藤さんとは所属のART TRACE GALLERYのグループ展『105°』でご一緒したことがあります。

作家の日常(生活)が伝わって来るような作品

展示作品の中で特に印象的だったのは、次の3点のような生き物をクローズアップした絵画でした。

斉藤さんは『105°』展の後まもなく沖縄に移住され、今も沖縄に住んでいらっしゃいます。
作品からは、その沖縄で暮らす斉藤さんの日常(生活)の心地良さや、生き物に向ける眼差しの優しさ、時間がゆったりと流れるさまなどが伝わって来ました。

展示公式ページのステートメントには、雨を喩えとした自然と一体化するような生活の様子が綴られていました。

制約から生まれたコラージュ作品

また絵画のほかにコラージュやインスタレーションも展示されていましたが、コラージュに関しては最初に移住した沖縄の島が本島ではなかったため画材店がなく、キャンバスなどが手に入らなかったことから、日常使う紙などに描かざるを得ず、それがきっかけで生まれた作品とのことでした。

この話などは、社会学者のハワード・S・ベッカーが『アート・ワールド』の中で論じている「アーティストは画材等のメディウムの供給面の制約の影響から逃れられない」旨の記述を連想させるとともに、古くから伝わる「制約はクリエイティブの源泉」との格言を思い起こさせるものでした。

次回はこの後に見に行った、UP & COMINGの展示の感想を掲載する予定です。

参考文献

ハワード・S・ベッカー著『アート・ワールド』、慶應義塾大学出版会、2016年

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